来春から有給休暇義務化   政府はなぜ国民に「強制感」をもたせたのか?

2019年4月より、有給休暇の取得義務化

「働き方改革法案」が成立し、来年2019年4月より「年次有給休暇の取得義務化」が始まる。

これまでは有給を消化するかどうかの判断は社員に任されており、別に年に一度も有給をとらなかったとしても法律上特に問題はなかった。しかし、来春からは、有給休暇取得が義務化される。最低「年に5回」の有給をとらせないと労働基準法違反になるのだ。

有給義務化を守らなかった場合、会社責任者には6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられる。有給義務化を守らなかった場合に厳しい厳罰が課せられることに違和感を抱く国民も少なくないだろう。政府の「本気」が伺い知れる。

有給取得率の低下を是正するために誕生したこの制度。一体なぜこのような「強制感」をもたせる必要があったのだろうか?そして、社員は本当に休めるようになるのだろうか?

 

日本の有給取得率は「世界最下位」

休んで給与がもらえる、有給はとても素晴らしい制度である。有給が嫌いな人はいない。

 しかしながら、今回の有給義務化に対しては、手放しで喜べない人も多いだろう。私は「強制感」を持たされたことにより、「本当に休めるのか?」「万が一休めなかった場合どうなるのか?」などという不安を抱いてしまった。

 日本政府は強制感を持たせることで、国民から不満や不安の声が出ることはわかっていたはずだ。ではなぜそれを承知で有給義務化に踏み切ったのか?その背景には、世界的にみても日本の有給消化率が極めて低いことがある。

 「日本人は勤勉な民族だ」と言われている。世界的にもそう思われているし、日本人自身も「自分たちが世界有数のよく働く人種である」という自覚はあるだろう。実際に、世界各国と比べて日本の有給消化率は極めて低く、20162017年ともに有給消化率は世界最下位である。(参考URL有休消化率2年連続最下位に!有給休暇国際比較調査2017│エクスペディア

日本人の平均有給消化率は約50%であり、本来取得できる有給休暇のうちの半分は未消化のままなのである。平均有給消化率100%のフランスやスペイン、75%のイタリアと比べて、日本の有給取得率は極めて低い。

昨今の日本では、たびたびブラック企業問題が取り沙汰されている。日本企業に常態化している長時間労働や無休労働に対して、政府が半ば強制的な手段を用いてでもメスを入れなければならないという判断が下されたのである。

日本人の2/3が有給休暇にためらいを感じている

今回、政府がこのような強制的な有給義務化に踏み切ったのは、「こうでもしないと取得しないから」である。日本には「休まない文化」が蔓延しているのだ。平成29年度に厚生労働省が行った意識調査(以下参照)によると、有給休暇に「ためらいを感じる」と回答した労働者が6割を超えた

 

(参考URL:厚生労働省HPより)

 

日本人が有給を取らない理由は、第一位「緊急時のためにとっておく」。第二位「人手不足」。第三位「他の人がとっていないのにとりづらい」だった。要するに、とれないわけではなく周囲に遠慮してとらないのだ。有給休暇をとることで周囲へのしわ寄せが行くことを懸念する人が多く、「有給休暇とりましょうよ」というレベルの働きかけでは事態は変わらないのだ。

今回の有給義務化は、あえて「強制感」をもたせることでためらいの気持ちを払拭する狙いがある有給義務化により、むしろ有給を取らない方が会社に迷惑がかかる(労働基準法に違反してしまう)ため、今後は遠慮なく取得できるだろう。

 

職場で協力して、有給取得のための環境づくりを

「強制感をもたせることで有給取得へのためらいをなくすこと」、ここまでが政府にできることである。あとは実現に向けて会社単位で動く必要がある。職場の仲間が気持ちよく有給がとれるような環境づくりが重要である。有給は社員のストレスや精神的負担を軽減できる魅力的な制度である。

経営者主導のもと、社員全員が有給取得率100%を目指せるような環境づくりをしてほしい。そのためにはまず、チームで仕事をすることが大切だ。個人プレーで「その人にしかできない仕事ができる人」を高く評価していると、休まれたら会社が回らないため、いつまでも有給はとれないだろう。

また、個人プレーができる人間を高く評価していると、その人が突然辞めたときに会社に混乱が起こるのでよくない。仕事をチームで行い、チームの中で仕事の進行状況等についてきちんと情報共有することで、休みやすい職場環境になる。

休みやすい環境づくりが整っている会社は、情報共有がしっかりとできているといえるだろう。情報共有が行き届いているということは、会社の安定にも繋がる。つまり、休みやすい環境づくりを整えることは、会社を安定させることに等しいのだ。

有給取得は、社員にとっても会社にとってもwin-winな制度なのである。来春の有給義務化により、日本が有給取得率最下位から脱却することを切に願っている。

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