
「東京に、家を持とう」のキャッチフレーズと圧倒的な成長力で、売上高1兆円企業へと上り詰めたオープンハウスグループ。
そのカリスマ創業者である荒井正昭氏がついに社長の座を譲り、新体制へと移行しました。
後継者に選ばれたのは、創業家一族ではなく、新卒入社からの「完全実力主義」で勝ち上がった福岡良介氏です。
本記事では、新社長・福岡氏の華麗なる経歴から、気になる荒井氏の現在の動向、そして「不動産業界日本一」を目指す新体制の全貌までを徹底解説します。
オープンハウスの現社長は誰?

2026年1月現在、オープンハウスグループの代表取締役社長を務めるのは福岡良介(ふくおか りょうすけ)氏です。
2025年10月1日付で創業者の荒井正昭氏から社長職を引き継ぎました。
項目内容代表取締役社長福岡良介氏就任時期2025年10月1日出身東京都学歴早稲田大学商学部卒業入社年2002年
2002年4月に入社後、同年12月に株式会社創建ビルド(現オープンハウス・ディベロップメント)に入社しました。2006年12月には28歳で同社代表取締役社長に就任しています。
その後、2021年12月に取締役専務執行役員、2025年4月に代表取締役専務執行役員を経て、2025年10月に代表取締役社長に就任しました。
重要なのは、福岡氏は荒井氏の親族ではなく、完全実力主義での抜擢という点です。
これはオープンハウスが掲げる「年齢・性別・学歴不問」の企業文化を象徴する人事といえるでしょう。
創業者・荒井正昭氏の現在
創業者の荒井正昭氏は完全に引退したのでしょうか?答えは「ノー」です。
荒井氏は現在、取締役Founderという肩書きで経営に関与し続けています。
代表権は譲りましたが、次世代リーダーの育成、新規事業戦略の企画立案、経営陣のアドバイザーとして重要な役割を担っています。
社長在任期間は1997年9月から2025年9月までの28年間。退任理由について、荒井氏は公式発表でこう述べています。
「気力・体力が充実しているうちに権限委譲し、経営幹部の更なる成長を促すため。私自身は次世代リーダーの育成と新たな成長戦略の企画立案に注力する」
荒井氏は今後、経営陣のサポートや次世代リーダーの育成とともに、新たな経営戦略・成長戦略の企画立案に注力する方針です。
創業者・荒井正昭氏の経歴と成功の軌跡

高卒・2浪から不動産業界へ【挫折からの出発】
荒井正昭氏のプロフィールは、一般的な大企業経営者とは大きく異なります。
生年月日:1965年10月29日(60歳)
出身地:群馬県太田市(旧藪塚本町)
最終学歴:群馬県立桐生南高等学校卒業
家族背景:父親も地元で不動産会社経営
高校卒業後、荒井氏は大学進学を目指して2浪しますが、断念。
当初は司法書士を目指し、その資金稼ぎのために1987年、22歳で不動産会社「ユニハウス」に入社しました。
しかし、司法書士の夢は諦めることになります。代わりに、10年間営業の世界に没頭し、トップセールスマンとしての地位を確立しました。
酒もゴルフもやらず、ひたすら営業に集中する姿勢が、後のオープンハウス創業の基盤となったのです。
この哲学は、後のスピード経営・現場主義の原点となり、オープンハウスの企業文化の核となっています。
31歳でオープンハウス創業【売上1兆円までの道のり】
1997年9月、荒井氏は31歳で同僚2人とともに東京・渋谷でオープンハウスを創業しました。
資本金はわずか数百万円。センチュリー21のフランチャイズ加盟店としてスタートし、「東京に家を持とう」をスローガンに、都心の手頃な価格帯の戸建てに特化する戦略を打ち出しました。
急成長の軌跡
1997-2001年:不動産仲介でセンチュリー21全国1位達成
2001年:自社開発の新築一戸建て販売開始(製販一体モデルの確立)
2008年:マンション事業参入
2012年9月:センチュリー21から独立、自社ブランド化
2013年9月:東証一部上場(創業16年)
2023年:売上高1兆円突破
この成長スピードは驚異的です。同社の連結従業員数は、2025年9月30日時点で6,620名に拡大しています。
経営理念とリーダーシップ【カリスマ創業者の手腕】
荒井氏の経営を支える3つの哲学があります。
1. 実力主義の徹底
年齢・性別・学歴を一切問わない評価制度。最年少部長は20代で昇格しており、成果を出せば誰でもキャリアアップできる環境を整えています。
2. 顧客志向
「都心に安く家を持つ」という明確なミッション。都心の狭小地を活用した3階建て戦略で、中間マージンをカットし、手頃な価格を実現しました。
3. 現場主義
社長自らが営業最前線に立ち続けた姿勢。トップが現場を理解しているからこそ、スピーディな意思決定が可能になりました。
一橋ビジネススクールの楠木建教授は、荒井氏を「久々に現れた戦国大名。
織田信長・豊臣秀吉・徳川家康を足して3で割ら”ない”タイプ」と評価しています。攻め・築き・守りのすべてを兼ね備えた稀有な経営者という意味です。
社長交代の背景と新体制の方針
なぜ今、社長交代なのか
2025年3月31日、オープンハウスグループは社長交代を発表しました。荒井氏は公式コメントでこう述べています。
”さらに当社グループが飛躍するためには私以外の経営幹部がもう一段、二段上の役割を
担えるようになる必要があると考えました。そこで、自身の気力・体力ともに十分なうちに、
既存事業について現経営陣にさらなる権限の委譲を行い、私自身は経営陣のサポートや次世
代リーダーの育成に専念するとともに、新たな経営戦略・成長戦略の企画立案に注力するた
めに、来期の期初から新経営体制とすべく、業績の改善も鮮明になったこのタイミングで代表取締役社長を退く決意をいたしました。”
引用:https://openhouse-group.co.jp/ir/upload_file/m000-/20250331_representativedirectors_executiveofficers_j.pdf
この交代劇は、計画的な承継プロセスとして進められました。
2025年4月1日:福岡氏を代表取締役専務執行役員に昇格(6ヶ月の準備期間)
2025年10月1日:正式に社長交代
取締役会の実効性評価結果の概要(2025年12月25日公表)によると、後継者計画に関する議論を重ねた結果、新たな経営体制のもとで福岡良介氏を代表取締役社長に選定したと説明されています。
福岡良介新社長の経営方針
福岡新社長の3つの重点施策を見てみましょう。
1. 既存事業の磨き上げ
戸建て・マンション事業の更なる強化。日本一の販売戸数をさらに伸ばし、不動産業界でのポジションを確固たるものにします。
2. 新規事業への挑戦
福岡社長は2025年11月の決算説明会にて、既存事業の延長線上にある周辺領域での取り組みを積極的に積み上げ、ホテルやアパート用地の活用を進める方針を示しました。グループ会社の株式会社オープンハウス・ホテルズ&リゾーツが手がける初の自社運営ホテル「KÚON 箱根強羅」は、2025年11月8日に開業しています。
3. ガバナンス強化
ガバナンスおよびコンプライアンスの強化を図り、労働時間管理、階層別研修の実施、内部監査などを通じて、さらなる成長を支える体制を構築しています。
荒井氏との違いと共通点を整理すると、現場主義・実力主義・顧客志向という共通DNAを持ちながら、福岡氏は新卒入社の生え抜きでデジタルネイティブ世代、開発畑出身という特徴があります。一方、荒井氏は営業畑出身でした。
福岡新体制1年目(2026年9月期)の業績目標
福岡新体制の初年度となる2026年9月期は、増収増益を見込む計画です。
| 項目 | 2025年9月期 実績 | 2026年9月期 予想 |
| 売上高 | 1兆3,364億円 | 1兆4,850億円 |
| 営業利益 | 1,459億円 | 1,745億円 |
荒井前社長が率いた2025年9月期は、売上高1兆3,364億円(前期比103.1%)、営業利益1,459億円(前期比122.5%)で着地しました。
福岡新体制の2026年9月期は、売上高1兆4,850億円、営業利益1,745億円を予想しています。営業利益は期初予想の1,700億円から引き上げられました。
あわせて、2024年9月期から2026年9月期までの3カ年累計当期純利益の目標を当初の2,500億円から3,055億円へ上方修正しています。
3年累計の株主還元額も当初の1,000億円から1,300億円へ引き上げ、総還元性吁40%以上を目指す方針です。
市場の反応と今後の展望
社長交代に対する市場の反応は概ね好意的です。
アナリストからは「計画的な承継により、カリスマ依存からの脱却に成功」「福岡氏の実績は十分。むしろ若返りによる新風に期待」との評価が聞かれます。
実際、社長交代発表後も株価は安定推移しており、投資家からの信頼は揺らいでいません。
「不動産業界日本一」というビジョンは継続され、むしろ新体制での成長加速に期待が集まっています。
オープンハウスの強みと今後の展望

1兆円企業を支える3つの強み
オープンハウスが短期間で1兆円企業に成長できた理由は、明確な競争優位性にあります。
1. 製販一体モデル(仕入れ〜販売まで自社完結)
土地の仕入れから設計、施工、販売まですべて自社で行うことで、中間マージンをカット。「都心の狭小地・3階建て」に特化した独自戦略により、都心の戸建てを手頃な価格で提供できています。
2. 米国不動産事業の拡大
2010年にカリフォルニア州に現地法人を設立し、海外展開を推進。米国での戸建て開発・販売事業を拡大しており、国内市場に依存しないポートフォリオを構築中です。
3. 積極的なM&A戦略
プレサンスコーポレーションは2020年5月に持分法適用関連会社化、2021年1月に連結子会社化を経て、2025年4月に完全子会社化しました。また、三栄建築設計は2023年10月に連結子会社化、同年11月に完全子会社化し、2024年3月に株式会社メルディアへと商号を変更しています。
新規事業への挑戦
福岡新体制での最大の注目は、不動産以外の領域への挑戦です。
ホテル・リゾート事業参入(2025年11月「KÚON 箱根強羅」開業)
株式会社オープンハウス・ホテルズ&リゾーツが手がける、グループ初の自社運営ホテル「KÚON 箱根強羅」が2025年11月8日にオープンしました。不動産開発で培ったノウハウを活かし、宿泊・リゾート施設の運営に乗り出しています。
日本酒リキュール開発
群馬県みどり市の蔵元・近藤酒造と共同で、日本酒リキュール「Shu Shu Shu Shu」を企画開発しました。近藤酒造の若手女性蔵人と、オープンハウスグループの若手女性社員が企画・開発を担当しています。
まとめ
2025年10月、オープンハウスグループは大きな転換点を迎えました。
今回の社長交代劇と今後の展望について、重要ポイントを整理します。
「完全実力主義」の証明
新卒一期生の福岡良介氏が社長に就任したことは、創業以来のDNAである「年齢・属性を問わない実力主義」が、トップ人事においても見事に体現されたことを意味します。これは現社員や求職者に対し、強烈なポジティブメッセージとなるでしょう。
「守り」と「攻め」の最適配置
創業者の荒井正昭氏は引退せず、「取締役Founder」として新規事業や人材育成に注力。一方で、現場を熟知した福岡新社長が既存事業を磨き上げます。この役割分担により、1兆円企業としての盤石な体制と、ベンチャーのような機動力を両立させる狙いがあります。
不動産以外への挑戦
「日本一の不動産会社」という目標に加え、ホテル・リゾート事業などの多角化が本格始動します。既存の製販一体モデルという強みを活かしつつ、新たな収益の柱を構築できるかが、福岡新体制の真価を問う試金石となるでしょう。
オープンハウスは今、名実ともに第二創業期へと突入しました。安定した株価推移が示す通り、市場はこの進化を好意的に受け止めており、これからの快進撃にさらなる注目が集まります。





